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治療症例集(第2回):脳血管疾患への漢方治療

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 東6Fに入院中の脳血管疾患の患者さんを対象に、漢方診療科・脳神経外科・神経内科・リハビリテーション科の4科による合同回診が行われています。これは、脳血管疾患の患者さんに対して、早期に漢方診療を導入することで症状を緩和していこうという取組みです。診療科の垣根を越え、かつ東洋医学と西洋医学の融合とも言える、まさに飯塚病院ならではのこのチーム医療について、毎月連載で症例を紹介していきます。今回の症例は、主治医が神経内科の金藤先生、漢方診療科の担当医は犬塚 央先生です。

神経内科 金藤 秀治
◎症例紹介(神経内科 金藤 秀治)
 脳梗塞後にうつ状態となる患者さんは多く、今回私が経験した症例もそのような1例です。
 患者さんは86歳の女性、病前は一人暮らしで自立した生活をしており、話好きな方だったとのことです。その方が右脳に広範囲の脳梗塞を発症し、私が主治医をすることになりました。
 入院時より意識は清明であるのにいつも無表情で活気が無く、脳梗塞による左片麻痺に対してリハビリを行っても積極性がないためになかなか症状が改善しませんでした。重度のうつ状態と考え、選択的セロトニン再取り込み阻害薬という抗うつ薬を開始することにしたのですが、この薬は効果が現れるまでに2週間程度かかるため、その間に廃用による筋力低下を来たす可能性もありました。
 そこでその間、脳梗塞再発予防薬と相互作用のない薬について漢方診療科に相談を行い、ウチダの八味丸Mの処方も開始することにしました。3日程経過した時点で明らかに表情が豊かになり、笑顔も見られるようになり、5日程経過したころにはリハビリスタッフも変化に気がつくほどリハビリに対して積極的に応じるようになりました。その後、患者さんはふらつきはあるものの自力歩行可能になり、リハビリ継続の希望があったため、リハビリ病院へ転院されました。
 脳梗塞後のうつ状態に漢方薬を早期に導入することで精神症状改善の立ち上がりを早くし、ADLの向上に寄与する可能性があることを経験した症例となりました。
漢方診療科 犬塚 央
◎漢方診察および処方(漢方診療科 犬塚 央)
 脳塞栓症を発症後、意欲の低下した状態が続き、抗うつ薬を投与しても効果がみられないとのことでご相談をうけました。
 診察すると足が冷たく、腹部において下腹部の腹壁の緊張が低下した「小腹不仁」という所見と、さらに下腹部正中線上の皮下に索状物を触れる「正中芯」という所見がみられました。これらは、漢方では「腎」の気が衰えた「腎虚」の病態を示す所見と考えられます。「腎」とは、親からもらった生命力である「先天の気」が宿る所とされ、消耗していくと下半身の冷え、足腰の痛み・しびれ・脱力、下肢のむくみ、排尿異常、精力減退、かすみ眼、難聴といった、いわゆる「加齢現象」と呼ばれるような症状が出現してきます。
 この患者さんには、他に胃腸障害や極度に疲弊した様子などもなく、この「腎虚」の所見のみが目立ちましたので、腎虚に対する代表的な薬「八味地黄丸」の使用をお勧めしました。八味地黄丸には、トリカブトの根から作られた「附子」という生薬が含まれています。附子は体を温める力が非常に強いため、冷えの治療にしばしば用いられます。(トリカブトの毒性は処理されており問題ありません。)

掲載日:2009年7月8日

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