 ◎症例紹介(神経内科 金藤
秀治) 脳梗塞後にうつ状態となる患者さんは多く、今回私が経験した症例もそのような1例です。
患者さんは86歳の女性、病前は一人暮らしで自立した生活をしており、話好きな方だったとのことです。その方が右脳に広範囲の脳梗塞を発症し、私が主治医をすることになりました。
入院時より意識は清明であるのにいつも無表情で活気が無く、脳梗塞による左片麻痺に対してリハビリを行っても積極性がないためになかなか症状が改善しませんでした。重度のうつ状態と考え、選択的セロトニン再取り込み阻害薬という抗うつ薬を開始することにしたのですが、この薬は効果が現れるまでに2週間程度かかるため、その間に廃用による筋力低下を来たす可能性もありました。
そこでその間、脳梗塞再発予防薬と相互作用のない薬について漢方診療科に相談を行い、ウチダの八味丸Mの処方も開始することにしました。3日程経過した時点で明らかに表情が豊かになり、笑顔も見られるようになり、5日程経過したころにはリハビリスタッフも変化に気がつくほどリハビリに対して積極的に応じるようになりました。その後、患者さんはふらつきはあるものの自力歩行可能になり、リハビリ継続の希望があったため、リハビリ病院へ転院されました。
脳梗塞後のうつ状態に漢方薬を早期に導入することで精神症状改善の立ち上がりを早くし、ADLの向上に寄与する可能性があることを経験した症例となりました。 |