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024.浮腫・むくみ:こんなときには漢方

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●浮腫・むくみ

のどが渇き水を欲しがる・尿量減少  ツムラ五苓散ごれいさん(ツムラ17)
冷え性・ふらっとするめまい感  ツムラ真武湯しんぶとう(ツムラ30)
膝から下の冷え・下半身の不調  ツムラ八味地黄丸はちみぢおうがん(ツムラ7) ・ ウチダ八味丸はちみがんM

【薬の解説】

1. 五苓散
のどが渇いて水を飲みたがるが、その割には尿量が少ない
汗をかきやすい 雨の前になると症状が悪化することが多い
2. 真武湯
冷え性 ふらっ・くらっとするめまい感がある 時に動悸や頭冒感がある 倦怠感(+)
3. 八味地黄丸
下半身の不調(膝以下の冷え 腰痛 夜間頻尿 足底部のほてりなど)を伴う
臍より下の腹力(手で按じた時の抵抗力)が弱い…フニャフニャしている
臍より下の知覚鈍麻

<似た処方>

 牛車腎気丸ごしゃじんきがん(ツムラ107)
    八味地黄丸が使えそうな人で、下肢(特に膝以下)の浮腫が強い場合

<別の一手>

 防已黄耆湯ぼういおうぎとう(ツムラ20)
    典型例は「蝦蟇腹(がまばら)」…腹部は肥満して軟弱、仰臥位で横に広がる
水肥り+暑がりの寒がり+汗かきの女性 ← 防已黄耆湯が使える典型例!


実際の処方
二日酔いなどでのどが渇いて全身がむくみっぽい
ツムラ五苓散 7.5  3×毎食前
高齢者で膝から下が特にむくむ(胃が弱い人は食後服用でも可)
ツムラ八味地黄丸 7.5  3×毎食前 (冷えが強い→三和加工ブシ末を1.5〜3.0追加)
ウチダの八味丸  60丸  3×毎食前 (同上)
浮腫が強い時 ツムラ牛車腎気丸 7.5 3×毎食前(同上)
高齢者で新陳代謝が低下していて全身がむくむ
ツムラ真武湯 7.5  3×毎食前
いわゆる水太りの女性のむくみ(膝関節の水腫にも良い)
ツムラ防已黄耆湯 7.5  3×毎食前
下半身の不調(膝以下の冷えや夜間頻尿 足底部のほてり)を伴う時
防已黄耆湯 7.5 + 八味地黄丸7.5 3×毎食前
今月号掲載の方剤は、いわゆる「利尿剤」と違って溢水の場合は利尿的に働き、脱水の場合は抗利尿的に働く。また、電解質を乱さない。

<適応病名>
 ツムラ五苓散 浮腫 ネフローゼ 二日酔い めまいなど
 ツムラ真武湯 慢性腸炎 胃アトニー 胃下垂 ネフローゼ 心不全で心悸亢進など
 ツムラ八味地黄丸 腎炎 糖尿病 坐骨神経痛 腰痛 前立腺肥大など
 ウチダの八味丸M 下肢痛 腰痛 しびれ むくみなど
 ツムラ牛車腎気丸 下肢痛 腰痛 しびれ 排尿困難 頻尿 むくみ
 ツムラ防已黄耆湯 腎炎 ネフローゼ 陰嚢水腫 肥満症 関節炎 浮腫 多汗症など

(文責:漢方診療科 中村 佳子)

西洋医学的な発想〜浮 腫〜

【定義】 間質における体液の増加

【原因(病因)】
 
1) 静脈およびリンパ管の閉塞 2) 心拍出量の減少 3) 低アルブミン(Alb)血症
4) 胸腔、腹腔などへの体液貯留 5) 毛細血管への透過性の亢進 6) 有効循環血液量の減少
7) 腎性の因子 8) ホルモン(RAA系等)の関与 etc

【診断のプロセス】
 
1) 問診…問診により多くの情報が得られ、病因を推定することができる
2) 診察のポイントは浮腫の部位を見る
@) 局所性 炎症性疾患や腫瘍性疾患による局所の静脈やリンパ管の閉塞があれば胸水や腹水が生じる
A) 全身性 全身性浮腫の場合は高度の低Alb血症の有無を評価する
a) 低Alb血症が存在する場合→病歴、身体所見、採血、検尿、その他の検査により、基礎疾患が肝硬変、高度の栄養障害、蛋白漏出性胃腸症、ネフローゼ症候群のいずれかであるかを鑑別する必要あり
b) 低Alb血症が存在しない場合→全身性浮腫を生じるほどのうっ血性心不全の所見(V音の出現、末梢のチアノーゼ等)を探す
<鑑別疾患> 薬剤誘発性浮腫(降圧薬、利尿剤等)、粘液水腫、月経前浮腫、特発性浮腫

これらの診断の後にはじめて治療が行われます。原因疾患により治療法は全く異なるため、時に治療により浮腫が増悪する場合も経験します。「たかがむくみ」だと安易に考えず、問診、診察、検査、診断の手順をきちんと踏んだ後に、治療が開始されることが肝要です。安易に利尿剤を投与することだけは避けるべきだと考えます。

(文責:腎臓内科 木村 廣志)

〜 部長のたわごと(24) 漢方治療は陰陽バランスの補正 〜
 浮腫を漢方医学的に捉えれば、体内循環の3要素『けつすい』における水(無色の液体)の異常=水毒(水滞)であることがほとんどです。その治療には駆水剤(利水剤)を用いますが、今回ご紹介した漢方薬も代表的な駆水剤です。水毒の症状としては、上記の「間質における体液の増加」や分布の異常、水様物の分泌・排泄、目まいや耳鳴など(たわごと9参照)があり、駆水剤にはこれらの多様な病態を改善する作用がある点も、利尿剤とは異なります。なお、水毒は冷え(寒)を伴い易く(たわごと13参照)、“陰証”の傾向があります。真武湯、八味地黄丸は陰証に適応し、服用することで生体を温める作用が強い“熱薬”の附子(トリカブトの根)を含有します。防已黄耆湯も陰証に準じた漢方薬です。
 漢方は中国に起源を発し、1500年かけて日本で受容されてきた医学ですので、その用語は中国由来の文字=漢字で表現され、自然界には相対的な「陰・陽」があると認識しています。陰陽の例として上下、寒暖、昼夜などがありますが、漢方医学的な病態(証)の基本も陰(証)か陽(証)かで、下部概念として寒熱、虚実、表裏があります。生体を循環する生理的要素は(陽)気と(陰)液=血(後に赤色の血と無色の水に分けた)からなり、その病態として、気:上衝・気うつ・気虚、血:お血・血虚、水:水毒があります。いかなる病気、どの臓器の異常も、以上の尺度を組み合わせ、病人全体の闘病反応の状態(証)を見極めることが、漢方診療の基本です。そして寒に対しては熱薬、熱には寒薬という薬性の陰陽を対応させ、虚は補い実は瀉して、陰陽バランスの補正を目指します。
(文責:漢方診療科 三潴 忠道)

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