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020.倦怠感:こんなときには漢方

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●倦怠感

食欲がなく元気がでない  ツムラ六君子湯りっくんしとう(ツムラ43)
ぐったりして元気がない  カネボウ十全大補湯じゅうぜんたいほとう(カネボウ48)
高度な冷えを伴う全身倦怠感  茯苓四逆湯ぶくりょうしぎゃくとう(エキスでは下記で代用)
@. ツムラ真武湯しんぶとう(ツムラ30)+ツムラ人参湯にんじんとう(ツムラ32)  〔冷え[強]→三和加工ブシ末(S-01)追加〕
A. ツムラ真武湯+三和附子理中湯さんわぶしりちゅうとう(S-09)  〔冷え[強]→三和加工ブシ末(S-01)追加〕

【薬の解説】

1. 六君子湯
食欲低下があり元気がない 舌苔が厚いことが多い 心窩部圧痛

<似た処方>

 ツムラ人参湯(ツムラ32) 「六君子湯」かなと思うが 全身や心窩部の冷えあり
 附子理中湯=人参湯+附子(さらに冷えが高度)
2. 十全大補湯
元来比較的元気であった人がなんらかの原因で疲労困憊した状態
なんとなくとりとめのない疲労感(特別な症状に乏しいが全身的な疲弊・脱力感)
冷えが明らかであれば、加工ブシ末を加える
3. 茯苓四逆湯
だる〜い!(強い倦怠感・いつも横になりたがる)+全身の高度な冷え


<別の一手>
補中益気湯ほちゅうえっきとう(ツムラ41) 遷延した発熱性疾患など 内臓下垂(胃下垂・脱肛・子宮脱) 舌苔に濃淡あり

●上記の処方いずれも
  冷えが明らか、あるいは冷えが強い 三和加工ブシ末1〜2包を一緒に服用可

実際の処方例
食欲不振があり元気がない時(例:夏ばて)
Rp ツムラ六君子湯 3包 3×毎食前
日頃は元気だが、なんらかの理由で疲労が溜まった時(例:看病疲れ、登山中)
Rp カネボウ十全大補湯 3包 3×毎食前、または疲労時に1〜2包頓用
高度の冷えを伴う慢性疲労

茯苓四逆湯はエキスにないので下記のエキス剤で代用

Rp ツムラ真武湯+ツムラ人参湯 +(冷えに)三和加工ブシ末 3包 3×毎食前

<適応病名>
 ツムラ六君子湯 胃炎 胃アトニー 胃下垂 消化不良 食欲不振など
 ツムラ補中益気湯 夏やせ 病後の体力増強 痔 脱肛 結核症 食欲不振 胃下垂 感冒 子宮脱など
 カネボウ十全大補湯 病後の体力低下 疲労倦怠 食欲不振 ねあせ 手足の冷え 貧血
 ツムラ真武湯 胃腸疾患 胃腸虚弱症 慢性腸炎 消化不良 胃アトニー症 胃下垂など
 ツムラ人参湯 急性・慢性胃腸カタル 胃アトニー症など
 三和附子理中湯 慢性の胃腸カタル 胃アトニー症

(文責:漢方診療科 中村佳子)

西洋医学的な発想 〜倦怠感〜

 西洋医学的アプローチでは、成因の絞り込みからはじめます。倦怠感まるごとに対して、ケアーしようにも、倦怠感への有効な対症療法がありません。残念ながらビタミン剤も効果がある、と検証されていません。成因鑑別から始めるものの、成因が特定できるのは、半分から2/3程度であることが伝えられています。しかも、特定できない方の25%がうつ状態である、というなんとも悩ましい結果があります。
 鑑別の幅は、悲しくなるほど幅広く、少なく見積もっても次のようになります。

感染症(EB感染、HIV、結核、ライム病)、内分泌(甲状腺、副腎、糖尿病)、精神心療(うつ病、双極性障害、統合失調、認知症)、神経(睡眠時無呼吸、多発性硬化症、重症筋無力症)、血液(鉄欠乏、白血病、リンパ腫)、リウマチ(線維性筋痛症、多発性筋痛症、多発性筋炎)、心不全、消化器(悪性腫瘍、慢性肝疾患)、腎不全、慢性呼吸疾患、薬物副作用(βブロッカー、抗ヒスタミン剤)、アルコール関連、中毒(鉛、水銀、砒素、一酸化炭素)、慢性疲労症候群

 診察時に留意する点を列記します。
 発症からの持続時間:一ヶ月以内、1−6ヶ月、6ヶ月以上に分割することで、絞込みが楽になります。家族歴・既往歴(結核、甲状腺、肝炎、は、要注意)、職歴(重金属使用、アスベスト)、アルコール歴・薬物副作用(抗ヒスタミン、ステロイド、向精神薬、ベンゾジアゼピン、抗うつ剤、βブロッカー、アミオダロン、ジギタリス、抗けいれん剤、健康食品)、睡眠の量・質、食欲の変化、体重の変化、排便の調子の変化、1日の過ごし方。

 検査の目的は、診察で得た手がかりを元に、必要な特異的治療、予後不良疾患の除外が主体になります。が、手がかりがつかめなければ、検査を次のように乱発せざるを得ないことになります。CBC、白血球分画、血沈、糖、HbA1c、尿、肝酵素、BUN、Cr、Ca、P、CPK、フェリチン、TSH、コルチゾール、ACTH、胸部レントゲン、(選択として、腹部エコー、頭部CT、胸腹部骨盤CT、消化管検査)。

 そして、うつ病を積極的に疑う時には、慣れていない医師としてはSDSのような尺度の活用が役立ちます。

(文責:総合診療科 井村 洋)

〜 部長のたわごと(20) 元気を出させるNST 〜
 丈夫で長生き、元気な人は胃腸も丈夫。虚弱な子供はすぐにお腹を痛がります。生命活動を営み、成長するためにはエネルギーの補給が欠かせませんが、その根源は飲食物の摂取、消化吸収です。消化吸収機能の中心は中焦(胴体の中三分の一、剣状突起から臍付近)で、“脾”の臓と“胃”の腑があります。“脾”は肉づきに卑しいと書くためspleenの訳語にされましたが、むしろpancreasに相応しい大切な臓器です。胃はstomachのみならず中空臓器(消化管)の作用を含みます。つまり中焦は生命力(気)補充の中心で、例えば補中益気湯は『脾胃論』という古典に記載され、「中焦を補い元気を益す薬」という意味です。六君子湯や人参湯といった、胃腸虚弱に頻用される処方が倦怠感に適応となるわけです。また、生体反応が低下する結果、産熱も不足し、結果的に冷え(寒)を生じやすく、熱薬(生体を温める薬)の乾姜や附子も適応となります。乾姜は酸化に必要な呼吸の要所、肺も温め元気を益します。
 誕生後に獲得する気は「後天の気」で穀気ともいい、誕生時に親から授けられた生命力は先天の気、または漢方医学的な“腎”に宿るので腎気といいます(たわごと(14)参照)
(文責:漢方診療科 三潴忠道)

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