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016.排尿障害:こんなときには漢方

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●排尿障害

膀胱炎・排尿痛・血尿・残尿感  ツムラ猪苓湯ちょれいとう(ツムラ40)
前立腺肥大症・頻尿  ツムラ八味地黄丸はちみぢおうがん(ツムラ7)
 ウチダ八味丸はちみがんM
神経因性膀胱(排尿痛 残尿感)  ツムラ清心蓮子飲せいしんれんしいん(ツムラ111)

【薬の解説】

1. 猪苓湯
下腹部あたりに熱候がある(触診で下腹部が上に比べて少し温かい、陰部の熱感)
膀胱炎のファーストチョイス

<次の一手>

 竜胆瀉肝湯りゅうたんしゃかんとう コタロー竜胆瀉肝湯(N76)・ツムラ竜胆瀉肝湯(ツムラ76)
   猪苓湯より熱候(排尿時灼熱感・陰部熱感など)が強い時
2. 八味地黄丸・八味丸
下半身(特に膝から下)の冷え 時に足底のほてりを伴う
高齢者の頻尿 前立腺肥大症などの遷延尿 夜間頻尿に効果あり

<次の一手>

 牛車腎気丸ごしゃじんきがん 八味地黄丸に似ているが下腿の浮腫が強い
3. 清心蓮子飲
神経過敏な頻尿 尿意切迫
(八味地黄丸の適応に見えるが,胃腸が弱くて用いられない時にも考慮される)

 急性・慢性に関わらず膀胱炎の大部分には猪苓湯が有効。下腹部に手を当てて熱っぽい感じがあれば、まず使える。長期に尿道カテーテルを留置したり、寝たきりなどで尿路感染を繰り返す患者に、平素から猪苓湯を投与していれば、尿路感染症をかなり予防することが可能。予防的には1日1-2回の投与でも良いことが多い。また、検査上は膀胱炎ではなくても、膀胱炎様症状にも有効。尿路結石や腎炎など血尿を伴う疾患にも用いる。

 排尿障害をきたす疾患にはさまざまなものがある。漢方医学的には、熱(=炎症)を伴う病態か、寒(=冷え)を伴う病態かで選ぶ方剤が違ってくる。猪苓湯の構成生薬には「かっせき滑石」が含まれている。「滑石」の薬性は寒、すなわち熱を冷ますと共に、通りを滑らかにするといわれ、下腹部の熱症状としての排尿痛、血尿、残尿感を軽減させる。一方、八味地黄丸(牛車腎気丸)は薬性が熱(生体を温める)である附子や桂枝を含み、冷えると症状が悪化する排尿異常や老化に伴う排尿異常に使われる。こちらは寒を伴う病態に使用する。

<適応病名>
 猪苓湯「尿道炎 腎臓炎 腎結石症 淋疾 排尿痛 血尿 残尿感」。ツムラ八味地黄丸「腎炎 膀胱カタル 前立腺肥」。ウチダの八味丸M「排尿困難 頻尿 むくみ」。清心蓮子飲「残尿感 頻尿 排尿痛」。コタロー竜胆瀉肝湯「尿道炎 膀胱カタル」。ツムラ竜胆瀉肝湯「排尿痛 残尿感 尿の濁り」。

(文責:漢方診療科 中村佳子)

西洋医学的な発想 〜排尿障害〜

●排尿障害をきたす疾患(前立腺肥大症と神経因性膀胱)

T) 前立腺肥大症 前立腺の尿道周囲と移行領域の腺性および線維筋性組織の両方が徐々に増大し尿道を圧迫する疾患。70歳以上では70%に組織学的前立腺肥大症が生じ、その内40%以上に膀胱出口部閉塞の症状が出現し、さらに年齢が上がるとほとんど普遍的と成ります。

【症状】 閉塞症状 遷延性排尿(排尿までに時間がかかる)、尿線細小、苒延性排尿(排尿時間がかかる)、尿線の途絶、終末時滴下、残尿
刺激症状 頻尿、夜間頻尿、切迫性頻尿、切迫性尿失禁
【治療】 薬物療法…第一選択
1 α-受容体遮断剤(ハルナール、フリバス、アビッショト、ユリーフ)
2 前立腺様剤(エビプロスッタト、セルニルトン)
手術…薬物療法で効果(−)
1 経尿道的前立腺切除術(内視鏡的に前立腺を切除)
TUR-P(Transurethral Resection of Prostate)
2 被膜下前立腺摘除術
その他
 [1]バルーン拡張術 [2]尿道ステント [3]レイザー [4]温熱療法 [5]高温度療法

U) 神経因性膀胱 何らかの原因で神経機構がおかされ排尿障害を来す疾患。

【原因疾患】 …代表的な疾患
 [1]脊髄損傷(切迫性尿失禁あり) [2]脳血管障害(切迫性尿失禁あり) [3]糖尿病(尿閉あり)
【治療】
1 高圧膀胱による切迫性尿失禁を伴う場合
→膀胱尿管逆流症の予防も含めて膀胱内圧の低下をはかる
(ただし膀胱内圧低下に伴う残尿発生時は無菌的間歇導尿が必要)
2 膀胱内圧低下による尿閉状態の場合
→無菌的間歇導尿 or 尿道抵抗を低下させ膀胱平滑筋を刺激する薬物療法
[1] 抗コリン剤(膀胱内圧の低下)(バップフォー、ポラキス、ベシケア)
[2] 低緊張膀胱の刺激剤(ブラダロン)
[3] 無菌間歇導尿(CIC)
[4] α-受容体遮断剤(エブランチルのみ神経因性膀胱の適応)
[5] 膀胱内圧の上昇(ウブレチド)

※前立腺肥大症と神経因性膀胱両疾患が合併していることも多く注意が必要。

(文責:泌尿器科 種子田 洋史)

〜 部長のたわごと(16) 腹を探って決め手にしよう 〜
 漢方医学では診察を四つに分類し、目で見る望診では舌診が独特、聞診は聴力と嗅覚による診察、問診は現代医学と同じ、切診は触診(脈診と腹診が独特)です。これら望聞問切ぼうぶんもんせつの診察法を四診といいます。また体幹を三つ(三焦)に分け、剣状突起付近から上が上焦、剣状突起〜臍高は中焦、臍以下の下焦には漢方医学的な腎と膀胱があります。腹診では腹力つまり腹壁の緊張が大切で、弾力が強けれ実証(生体反応が充実した病態)、弱ければ虚証の判断材料となります。今回の対象は見方によると下焦が中心で、下焦の熱つまり下腹部の自他覚な熱候には猪苓湯、下焦の腹力が弱く下半身に冷えがあれば八味地黄丸が代表的な治療薬です。ちなみに人参湯の適応症(証)では、心窩部に按圧時の抵抗や圧痛(心下痞こう)があり冷たいことが多く、虚弱な人の胃腸障害や呼吸器疾患に応用されます。(八味地黄丸と腎虚:Vol.14の部長のたわごと参照
(文責:漢方診療科 三潴忠道)

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