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014.視力障害(かすみ目):こんなときには漢方

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●視力障害(かすみ目)

老化、下半身中心の冷えを伴う  ツムラ八味地黄丸はちみぢおうがん(ツムラ7)
 ウチダ八味丸はちみがんM
倦怠感があり目に勢いがない眼精疲労など  ツムラ補中益気湯ほちゅうえっきとう(ツムラ41)
‘仮性近視’(調節障害)で立ちくらみがある  ツムラ苓桂朮甘湯りょうけいじゅつかんとう(ツムラ39)

【薬の解説】

1. 八味地黄丸
下半身、特に膝から下が冷えやすい。
高齢者のかすみ目を含む視力障害に対しての漢方的ファーストチョイス。

<次の一手>

 冷え症状がない 六味地黄丸ろくみぢおうがん(ツムラ87)
 下肢の浮腫が強い 牛車腎気丸ごしゃじんきがん(ツムラ107)
2. 補中益気湯
倦怠感や疲労感があり目に勢いがない、眼精疲労などに使用
舌苔がまだらで濃淡あり
3. 苓桂朮甘湯
いわゆる‘仮性近視’で立ちくらみを伴う時に使用

 老人性白内障について藤平1)は八味地黄丸が7〜8割に有効であると報告している。約3年間のプロスペクティブな臨床経過から、特に初期の白内障の進行抑制に有効だとの報告2)もある。八味地黄丸とその類方は高齢者の諸疾患に多用されるが、視力に関する症状にも有効例が多く、八味地黄丸は最重要処方である。
 1)藤平 健 八味丸による老人性白内障の治療.日本東洋医学会誌24(4):465-479
 2)窪田靖夫 老人性白内障に対する八味地黄丸の投与成績.基礎と臨床23(6):2536-2540

【八味地黄丸の投与基準】(厚生省長寿化学総合研究事業の研究班による)

A項目

(1) 排尿障害(多尿・頻尿・尿利減少・夜間頻尿)
(2) 下半身優位の冷えまたは足底の煩熱
(3) 腰・下肢の疲労脱力・しびれ・疼痛
(4) 小腹不仁または小腹拘急
(下腹部の知覚鈍麻や腹力低下)

B項目

(1) 口渇または口乾
(2) 下肢の浮腫
(3) 精力減退
(4) 視力障害(白内障・眼精疲労・目のかすみ等)
(5) 慢性呼吸症状
(6) 聴覚障害(難聴・耳鳴りなど)
 除外項目 胃腸症状をきたしやすいもの
 判定基準 A項目が2つ以上、またはA項目1つでB項目が2つ以上

<適応病名>
 眼疾患の適応病名がついているのはウチダの八味丸Mのみ。(「老人のかすみ目」という適応病名がついています。)ツムラ八味地黄丸は、「腎炎・糖尿病・陰萎・坐骨神経痛・腰痛・前立腺肥大症・高血圧など」。ツムラ補中益気湯は、「夏やせ・食欲不振・胃下垂・感冒・痔・脱肛・子宮下垂・陰萎・半身不随・多汗症など」ツムラ苓桂朮甘湯は、「神経質・めまい・動悸・息切れ・頭痛」が適応病名となっていますので注意が必要です。

(文責:漢方診療科 中村佳子)

西洋医学的な発想 〜かすみ目〜

■かすみ目(霧視)の原因

1. 光の通り方の異常
@) 眼 瞼 眼瞼浮腫・眼瞼下垂
A) 角 膜 上皮障害 角膜混濁 角膜浮腫
B) 前 房 前房混濁
C) 水晶体 白内障 治療→手術が主体
D) 硝子体 混濁・出血 治療→硝子体手術の適応
2. 明瞭な光の結像がされない状態
屈折・調節異常 近視、遠視、乱視、老視、調節麻痺、調節痙攣など→眼鏡装用など
(老視は40歳前後で、夕刻の眼疲労で気づかれることが多い)
3. 光が正常に認知されない状態
網膜剥離 網膜が眼底から剥がれた状態 →手術、レーザーなど緊急処置必要
網膜浮腫 網膜血管の循環障害が原因 糖尿病網膜症など
網膜炎 ベーチェット病、フォークト・小柳・原田病、サルコイドーシス、
感染症(ウイルス性、結核性、梅毒性)など
4. 視野異常をきたす状態
緑内障 眼圧上昇、眼循環などの問題で視神経が障害(+)→眼圧降下薬(点眼薬)
視神経炎 球後痛、眼球運動痛にひきつづく著明な視力低下が特徴。
乳頭炎と球後視神経炎に分類→ステロイド使用(点滴→内服)
頭蓋内異常 頭蓋内腫瘍、脳梗塞、脳動脈瘤などが原因→脳外科コンサルト必要

 このようにかすみ目と一言でいいましても、多数の眼疾患が考えられ、重篤な疾患も含まれますので、まず眼科受診をおすすめいたします。

(文責:眼科 小池生夫、大原 進)

〜 部長のたわごと(14) 元気と老化と八味丸 〜
 皇孫ならずとも出産が感激的なのは、モノではなく生命の誕生!だから。この生命力を漢方医学では“先天の気”といいます。先天の気は親からの授かり物ですから補充は出来ず、上手に使い切ると寿命です。この先天の気は、“腎”(臍の高さ辺りの背部)に宿るといいます。“腎”は腎臓というより副腎や生殖器系の作用を含んだ概念が近そうです。“腎”は天寿まで“元気”を守りますが、老化とともにその機能低下である"腎虚"も進行しがちです。腎虚証では老化で出現しやすい症候が出現し易く、聴力障害、呼吸器症状、腰や下肢の痛みやシビレなどの諸愁訴、精力減退、排尿異常などのほか、視力低下(目のぼやけ)も含まれます。代表的な腎虚所見は少腹不仁(下腹部腹壁の弾力が軟弱)で、腎虚治療(補腎)の代表方剤・八味地黄丸(別名、八味丸、腎気丸)の主要な使用目標です。実際、かすみ目を来す疾患の多くに八味地黄丸が適応となります。
 八味地黄丸はもちろん経口で服用しますが、胃腸虚弱者には向きません。そこで消化器関連の漢方薬を先に用いたり併用することが必要な場合もあります。古来、八味地黄丸は丸薬を清酒で服用するとされており、副作用軽減と効果増強に有効です。
 なお誕生後の元気は食物を胃腸で消化吸収することにより補充され、これを“後天の気”といいます。元気な人は、老若を問わず胃腸が丈夫ですよね。
(文責:漢方診療科 三潴忠道)

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