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009.めまい:こんなときには漢方

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●めまい・めまい感

起立性眩暈  ツムラ苓桂朮甘湯りょうけいじゅつかんとう(ツムラ39)
ふらっ・くらっとする浮動感  ツムラ真武湯しんぶとう(ツムラ30)
頭痛・虚弱者の眩暈感  コタロー半夏白朮天麻湯はんげびゃくじゅつてんまとう(N37)

【薬の解説】

1. 苓桂朮甘湯
立ちくらみ(起立性眩暈・起立性低血圧)
2. 真武湯
めまい感以外の症状:頭冒感、動悸、冷え症(“熱薬”の附子を含む)
 【めまい感を聞き出すコツ】こんな症状はありませんか?
ふらっとする・くらっとする
雲の上を歩いているような浮動感
まっすぐ歩こうと思ってもなんとなく脇の方に寄ってしまう
目の前がすっと動いて見える
3. 半夏白朮天麻湯
平素より胃腸虚弱で、頭痛、嘔吐、倦怠感などのある、虚弱者のめまい感、食後に倦怠感や眠気が出現しやすい。

<次の一手>

 ツムラ五苓散ごれいさん(ツムラ17)…口渇・尿不利(水分摂取する割に尿量が少ない)・浮腫

<めまいの時に使用する代表的な漢方方剤の覚え方>
立てば苓桂(りょうけい) 回れば沢瀉(たくしゃ) 歩くめまいは真武湯(しんぶとう)
 立ちくらみには苓桂朮甘湯、回転性眩暈には沢瀉湯(エキス剤がないため五苓散で代用)、歩く時浮動感があるようなめまいは真武湯が有効なことが多い。
 なんとなくふらっとしたり、立ちくらみがしたり両方の症状がある時には真武湯と苓桂朮甘湯を一緒に服用することもある。めまいの出現しやすい人が服薬を継続することで、めまい感が出現しにくくなり体調も改善する。

 漢方医学的に「水(すい)」は身体中の透明な液体(リンパ液や体腔内の漿液などがこれに相当する)とされ、その異常を「水毒(すいどく)」という。「水」というイメージに結びつきにくい症状ではあるが大切な水毒症状として、動悸やめまい、耳鳴がある。従って、浮腫や胸水などを伴う疾患に、これらの方剤は応用可能である。真武湯は心不全やネフローゼ症候群、消化器疾患、感冒など幅広い臨床応用が報告されているが、自覚的なめまい感の聴取が適応の決め手となることが多い。五苓散が小児などで水様の嘔吐・下痢を伴う病態に有効なことは有名である。

<適応病名>
 ツムラ苓桂朮甘湯、コタロー半夏白朮天麻湯、ツムラ五苓散には「めまい」の適応があります。ツムラ真武湯には「めまい」の適応がなく「胃腸疾患」「胃腸虚弱」「慢性腸炎」「胃アトニー」「胃下垂」「ネフローゼ」「心不全で心悸亢進」などが適応病名ですので注意してください。

(文責:漢方診療科 中村佳子)

西洋医学的な発想 〜めまい〜

 めまいでは原因の詳細な鑑別よりも、重大な疾患によるものかどうかの確認から開始します。特に急性のめまいでは、そのプロセスを外せません。生命機能予後に関わるめまいを、以下のように大きく分けておくと、病歴が利用できます。


<頭痛を伴う>

小脳出血、くも膜下出血、内頚静脈血栓症
<難聴耳鳴を伴う>
脳幹梗塞:前下小脳動脈内耳動脈分枝の閉塞では「突然片方の耳が聞こえない」というため、突発性難聴と誤認しないように。
聴神経鞘腫:語音弁別障害(電話の音はよく聞こえるが、何をいっているのかがわからない)を生じるが、聴覚検査では異常を呈さないことがあります。2cm以内で発見しないと難聴を残すようです。
<頭位により誘発される>
悪性持続性頭位めまい症(MPPV):原因の殆どが脳幹・小脳の血管障害。多くはめまい以外の神経学的異常はない。「右を下にすると景色が流れ続けるが、左を下にすると止まる」は危険な症状。MRIで写る大きな梗塞でも、めまいだけのことがあり誤認しやすいです。
脳幹の虚血・梗塞:多くの場合、神経脱落症状を呈さない。否定できるまでは、梗塞やTIA(次の発作は梗塞かも)を疑うべき。脳幹の虚血範囲が狭いと前庭神経核のみ虚血を生じ、症状はめまいだけとなる。範囲が広がると、三叉神経核障害を生じ口唇やそのまわりのしびれや感覚低下がおこります。

 見逃したくない代表的疾患と特徴について呈示しましたが、それだけでもクラクラしてくるほど、めまいの急性期診療は緊張を強いられます。私自身が、肝に銘じて行っていることは、次のようなシンプルなルールです。


 起立、もしくは歩行が不安定な人は、めまいが軽症でも最悪のシナリオを考える。つまり重症疾患が潜んでいると見立てる。そこから重症疾患の可能性をどこまで下げられるか、ということに診断推論のエネルギーを注ぐ。


<治療と予後>

 大半のめまいは危険な疾患に起因せず、良性発作性頭位変換性めまい(BPPV)で、医者の力量によらず数週間で自然軽快します。その場合には、めまいを誘発する頭位変換を繰り返し行うことで、めまいそのものが軽快するという特徴が必ずあります(この方法の応用が治療にも使われています)。その確認こそが、重症疾患の可能性を大きく下げます。
 症状緩和に関しては、急性・慢性をとわず、西洋医学の方法は貧弱ですので、漢方頼みになります。

(文責:総合診療科 井村 洋)

〜 部長のたわごと(9) 水っぽい話 〜
 生体を維持する循環要素として、陽性の『』と陰性の『けつ』に分ける。血はさらに赤い液体(狭義の血)と、無色のすいに分けられる。水の変調を水毒(水滞)といい、その徴候は三つに大別される。第一に浮腫、胸水など体腔内の異常な貯留、これらの分布異常に伴う口渇など。次に鼻水、水様の痰や帯下、尿利異常、水様下痢など分泌(排泄)異常がある。三番目は内耳関連の徴候で、今回の主題であるめまい・ふらつきや、耳鳴りなどが挙げられる。今でこそメニエールは内耳リンパ液(水)の異常とされるが、古代中国人の知る由もなないのに、その観察眼の確かさには驚かされる。今回紹介した方剤は水毒治療方剤(駆水剤)に分類される。
(文責:漢方診療科 三潴忠道)

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