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007.頭痛:こんなときには漢方

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●習慣性頭痛

後頭部・首・(肩)のこりを伴う頭痛  葛根湯かっこんとう(ツムラ1)
冷え症で胃腸虚弱・心窩部圧痛  桂枝人参湯けいしにんじんとう(ツムラ82)
頭痛がひどく嘔吐する  呉茱萸湯ごしゅゆとう(ツムラ31)

【薬の解説】

1. 葛根湯
後頭部・首・(肩)のこりがある 緊張性頭痛・筋収縮性頭痛など
<よく似た処方>
桂枝加葛根湯けいしかかっこんとう(東洋 No27)
自汗傾向あり 葛根湯が胃に障る場合 “虚証の葛根湯”
2. 桂枝人参湯
平素から胃腸虚弱で冷え症 心窩部には圧痛があり冷たいことも多い
3. 呉茱萸湯
強い頭痛がおこりやすく頭痛が強いと吐く(吐くと頭痛が軽減する)手足の冷えあり
『 吐くほど激しい頭痛 → 呉茱萸湯 が第一選択 』
<次の一手>
五苓散ごれいさん(ツムラ17) 雨の前に出現する頭痛

方剤別の頭痛の漢方医学的発生機序
(1) 葛根湯の頭痛…筋肉の緊張のために頭痛が誘発される。慢性的な肩こりによる頭痛だけでなく、突発的な筋肉の緊張(例えば寝違えたとか)による頭痛にも効果あり。(漢方医学的には実証に適応する。虚証では桂枝加葛根湯が適応。)
(2) 桂枝人参湯の頭痛…胃腸虚弱で上腹部を中心に機能低下しているため、体の中心に蓄えておくべき熱()がふわふわと浮き上がって頭痛を誘発する。心窩部は冷えやすい。
(3) 呉茱萸湯の頭痛…胃に水分が停滞しかつ冷えている状態があり、その停滞した水分(かんいん寒飲)が上に衝き上げて頭痛がする。寒飲を吐くと頭痛の原因物質が減るので症状が軽減する。

★服用のポイント★★★ 頭痛に使用する漢方薬は『頓用』も『常用』もどちらも可能!
 急性期(発作時) 頓用可能。ある程度頭痛が予想されるなら、痛みが激しくなる前に服用することがポイント。
 慢性期(維持療法) 慢性的に頭痛が出現しやすければ定期的に常用することで発作がおこりにくくなり完治に向かう。
 ● 漢方薬は急性期の鎮痛薬としても、予防的治療薬としても、根治薬としても使える。
 ● 漢方エキス剤は必ず、白湯に溶いて温かくして服用。

<適応病名>・・・習慣性頭痛に関連している病名を抜粋
(1) 葛根湯:感冒、肩こり、上半身の神経痛(適応病名に頭痛はないので注意)
(桂枝加葛根湯:身体虚弱なもののかぜの初期で肩こりや頭痛のあるもの)
(2) 桂枝人参湯:頭痛
(3) 呉茱萸湯:習慣性片頭痛、頭痛
(4) 五苓散:頭痛

(文責:漢方診療科 中村佳子)

西洋医学的な発想 〜慢性頭痛〜

 頭痛の成因は、千差万別です。受診される多くの人は、様々な理由で脳の病気を心配していますが、幸いなことに大半の方に器質的な原因は見つかりません。このような機能的な慢性頭痛を、国際頭痛分類(ICHD-U)では「一次性頭痛」といい、(1)片頭痛、(2)緊張型頭痛、(3)群発頭痛と他の三叉神経・自律神経性頭痛、(4)その他の一次性頭痛に分けています。このうち日常診療で重要な鑑別は、片頭痛vs緊張型頭痛です。次の方はどのタイプでしょう。

 『40歳女性、20年前から月に3-4回は鎮痛剤を必要とする頭痛が生じる。頭痛は後頭部からはじまり頭全体に締め付けるようであり、肩こりを伴っていることがある。ひどくなると嘔吐を生じる。テレビの音声もうるさく感じる。市販のセデスを内服しても十分治まらない。頭痛の時には、買い物や家事も困難なことがあり、横になって休んでいる。一晩ゆっくり眠ると、翌日には殆ど軽快しているが、2日間続くこともある。』

片頭痛の基準
(1) 頭痛の持続時間は4〜72時間
(2)
次の中の2項目を満たす 片側 拍動性 中等度〜重度の頭痛 日常的動作により増悪or頭痛のために日常的動作を避ける
(3) 頭痛発作中に少なくとも右記の1項目を満たす:悪心または嘔吐 光過敏と音過敏
(4) これらの(1)〜(3)を満たす発作が5回以上ある
(5) 他の疾患によらない

 上記のケースは、この基準に該当しており「前兆のない片頭痛」と診断できます。
鑑別に重要なポイントは、「肩こり・後頭部」「非拍動」という訴えは緊張型に特異的でなく半数以上の片頭痛にも生じるため、「強度の頭痛」「日常性動作により増悪」「悪心・嘔吐を伴う」「光と音がわずらわしい」という片頭痛特有の症状に焦点をあてることです。
 一次性頭痛のマネージメントは、大きく二つに分けられます。
T.頭痛の軽減 NSAIDs トリプトファン製剤 エルゴタミン 高濃度酸素吸入 ステロイド カフェイン
U.予防 誘発因子の認識と調整

a.

生活習慣の改善…

睡眠不足 身体的・精神的ストレス アルコールを避ける

b.

予防に使用する薬物…

三環系抗うつ剤 抗けいれん剤 βブロッカー Caブロッカー Vit.B2 マグネシウム

c.

予防のための運動療法…

筋肉体操
 お勧め度5つ星の参考資料:ホームページ「頭痛大学」

(文責:総合診療科 井村 洋)

〜 部長のたわごと(7) 漢方生理学への誘い 〜
 漢方医学では、生体内を「気(き)」と「血(けつ)」が程よく調和して流通することで生命活動が営まれると考えます。何と荒唐無稽な!などと思うなかれ。アイツ「気が利かない」とか「ち血の巡りが悪いなあ」なんて悪口、実はこんな考えがなければ生まれません。気とは実体はないが生体内を廻っている電気のような存在で、西洋医学では認めない概念です。気は調子が狂うと上に行く性質があり、気が動転すると顔が赤くのぼせる(上衝じょうしょう)のもそのため。気の上衝は頭痛の一因にもなり、それを治す代表的な漢方薬の桂皮けいひ(シナモン)は、今回ご紹介した5方剤のうち呉茱萸湯を除く4剤に含まれています。けつは生体をめぐる液体成分で、物質的な面から生命現象を支えています。後にけつは、赤い液体の狭義のけつと無色の液体のすいに分かれました。これら気血水は生理的な循環要素ですが、病気はこれらのいずれか1要素以上の異常と考えられます。なお「いん」は、生体内の病的なすいを指します。
(文責:三潴忠道)

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