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003.腰 痛:こんなときには漢方

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●腰部・下肢の痛み

膝から下が冷える(高齢者) 八味地黄丸はちみじおうがん
腰の周囲が冷えて重たい 苓姜朮甘湯りょうきょうじゅつかんとう
つっぱって痛い 芍薬甘草湯しゃくやくかんぞうとう

【薬の解説】

1. 八味地黄丸はちみじおうがん  ツムラ7 ウチダの八味丸M
膝から下が冷える高齢者の腰痛には幅広く使える

<よく似た処方>

牛車腎気丸ごしゃじんきがん  ツムラ107
八味地黄丸が使えそうな人で下肢(特に膝以下)に強い浮腫がある人に使う
2. 苓姜朮甘湯りょうきょうじゅつかんとう  ツムラ118
腰部ときには臀部や大腿部がスース-と冷え、ときに重だるい人に使う
3. 芍薬甘草湯しゃくやくかんぞうとう  ツムラ68
腰から大腿部にかけて筋(すじ)が突っ張り痛むとき、坐骨神経痛などに使う
冷えると痛みが増強する場合は三和芍薬甘草附子湯(S-05)を使用する
★上記処方いずれも効果不十分の場合は三和加工ブシ末(S−01)1.5g〜3.0g追加★

 附子ぶしトリカブトの塊根で強い毒性を持っている生薬ですが、冷えて新陳代謝が落ちていて体力が弱っている患者様には治療上大変有用な薬です。漢方医学的には熱薬といわれ服用すると体を温め冷えを除きます。附子に含まれるAconitine系アルカロイドには鎮痛作用や抗炎症作用などが認められています。
附子の使用目標として(1)冷え症状がある(悪寒や冷えのぼせではなく体の芯から冷えている)(2)入浴などで体が温まると症状が緩和される(気持ちがよい)といったことが問診上重要になります。冷え(寒)のある場合はこれを温め症状を緩和してくれる附子ですが、冷えのない人に使用すると附子中毒をおこすので注意を要します。

<製剤の効果的な飲み方>

八味地黄丸は古来頻用される処方で、八味丸、腎気丸、八味腎気丸などの異名を持ちます。いずれも名の通り本来は丸薬です。ウチダの八味丸Mは小粒の丸薬で常用量は3包(1包=20丸・約2g)分3 空腹時(食前または食間)が基本。胃に障る時(特に丸薬)は食後の服用可。ツムラ八味地黄丸は水抽出されたエキス剤でお湯に溶いて空腹時に服用します。
 また、八味地黄丸はごく少量(20cc〜30cc程度)の温めた日本酒で服用すると、胃にやさしく効き目もよいとされています。もちろんお酒が飲めない方やアルコールを禁じられている方にはお勧めできませんが、そうでない方には一度試してみてはいかがでしょうか。

<レセプト上の注意>

 八味地黄丸や苓姜朮甘湯は「腰痛」で適応がありますが芍薬甘草湯は腰痛の適応がありません。適応症は「こむらがえり」や「筋肉の痙攣」になっています。また芍薬甘草附子湯の適応症は「慢性神経痛」「慢性関節炎」「関節リウマチ」「五十肩」「肩こり」になっています。
ご注意ください。

(文責:漢方診療科 中村佳子)

西洋医学的な発想

〜腰痛について〜
(1) 外傷歴がある場合:
腰椎レントゲン検査で骨折の有無を確認する。圧迫骨折、横突起骨折などがなければ腰部捻挫。
(2) 誘因が全くない場合:
何かの拍子に突然動けなくなったら急性腰痛症(所謂ぎっくり腰)。但し、安静時痛があり背部の激痛の場合は尿路結石を疑うべき。
(3) 誘因がある場合:
車の運転など長時間座っている場合やスポーツ時の痛みでレントゲンに異常がなければ筋筋膜性腰痛。
(4) 変性疾患によるもの:
レントゲン検査で腰椎の分離、すべり、椎間関節の変形、椎間板腔の狭小化、骨粗鬆の有無をみる。足のしびれを伴う場合はヘルニアや脊柱管狭窄を考える。
 投薬は痛みの強さに応じて、ボルタレン、ロキソニン、ソレトン、ノイロトロピン等のいずれかを、外用薬としてモーラス、セルタッチ等を併用します。

(文責:整形外科 新井 堅)

《 トリカブト中毒(附子中毒)について 》
 トリカブトといえば、山菜と間違って食べて中毒を起こした例や、トリカブト殺人事件の例など、その強い毒性で有名です。トリカブト中毒の症状は激しい嘔吐と口唇周囲のしびれ。死因は心室細動なので心電図をモニターし、必要があればアトロピンを静注します。
 トリカブトの根である附子(または烏頭=うず)にも勿論毒性がありますが、漢方薬として使用する時は減毒処理(これを修治といいます)したり、長時間煎じたりして安全性を高めます。しかし、適応症を間違えたり使用方法を間違えれば、トリカブト中毒を起こします。
 煎じ薬の場合、中毒症状は服用して30分前後で出現することが多いようです。
●附子中毒の症状
(1) 舌・口唇のしびれ
(2) 動悸
(3) 胸〜心窩不快感
(4) 身体動揺感
(5) 頭痛
(6) 血圧上昇
(7) 悪心・嘔吐
(8) 不眠
●中毒要因
(1) 煎じ時間の不足(生煮え)
(2) 方剤の変更(煎じ薬では、方剤によってアコニチンの抽出量が違う)
(3) 気候の温暖化(大寒を過ぎ気温の上昇と共に温める作用を持つ附子・烏頭は減らす必要も出てくる)
(4) 煎じ器の変更(煎じる火力が変わると生煮えなどがおきやすい)
(文責:漢方診療科 中村佳子)

〜 部長のたわごと(3) 温める薬・冷やす薬 〜
 来るべき冬の寒さには根菜を煮込んだオデンに燗酒、考えただけでも体が温まって元気が出そう。(近頃は燗をつけて美味い酒が減った!)これを夏にやると、単なるガマンくらべ。関節痛も古傷はホットパックで温め、捻挫したては冷やすとケアになる。温めるのか冷やすのか、食物なら季節に合わせ、痛みの手当ても状況に応じての選択が必要です。食物から派生した漢方薬、構成する生薬にも服用すると体を温める(温薬)のか、冷やす(寒薬)のかが重視されます。トリカブトの根である附子(ブシ。ブスとも読む。トリカブトの如く毒が有る女性は・・・・・オッと。口を滑らすと怖い、コワイ。)は温める作用が強いので、特に熱薬ともいう。鎮痛作用も有名だが、温めると楽になる、冷え性タイプの痛みにこそ適応。八味地黄丸にも含まれている。附子適応の決め手は「お風呂で温まると楽になりますか? 気持ちがいいですか?」と尋ね、「ハイ」ならOK。生姜から作る乾姜(カンキョウ)も熱薬だが、毒と鎮痛作用はない。そこで、乾姜含有の苓姜朮甘湯を腰痛に使うときはブシ末を加えることが多い。寒さに向かい既にふえ始めた腰痛・下肢痛、診療のご参考に。
(文責:三潴忠道)

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