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002.不 眠:こんなときには漢方

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●不眠の漢方治療

疲れがひどくかえって寝付けない 酸棗仁湯さんそうにんとう
体力も気力も弱り悪夢をみる 桂枝加加竜骨牡蛎湯けいしかりゅうこつぼれいとう
神経が疲れイライラ傾向 柴胡桂枝乾姜湯さいこけいしかんきょうとう

【薬の解説】

1. 酸棗仁湯さんそうにんとう  ツムラ103
ひどく疲れ過ぎてかえってみょうに寝付けない時
2. 桂枝加加竜骨牡蛎湯けいしかりゅうこつぼれいとう  ツムラ26
体力も気力も弱り恐い夢や追いかけられる夢をみる 腹部に動悸を触れる

<よく似た処方>

柴胡加竜骨牡蛎湯さいこかりゅうこつぼれいとう  コタロー12 ツムラ12
桂枝加竜骨牡蛎湯よりも体力がありイライラがある
3. 柴胡桂枝乾姜湯さいこけいしかんきょうとう  コタロー11
人前ではがんばって元気にふるまって見えて実は疲れやすく、少し神経質で冷え症

●漢方エキス製剤のオーダーの方法  例)桂枝加竜骨牡蛎湯
(1) 名称またはコードの欄に「けいし」と入力し検索キーを押す
(2) ツムラ桂枝加竜骨牡蛎湯エキス顆粒(No.26)を選択する
(3) 数量の欄に「7.5」と入力する
(4) 用法は「分3 朝・昼・夕」と「食前30分」または「食間」を選択する
あるいは 2.5(1包)効果が弱ければ5.0(2包)を眠前に投与する方法もある
(5) エキス剤はお白湯に溶いて服用した方が効果的なので、患者への指示の欄に「湯のみ半分ぐらいの白湯にまぜて服用してください」と入力する

 桂枝加竜骨牡蛎湯、柴胡加竜骨牡蛎湯には竜骨りゅうこつ牡蛎ぼれいが、柴胡桂枝乾姜湯には牡蛎がそれぞれ含まれています。竜骨は大型ほ乳動物の骨の化石、牡蛎は牡蠣かきの貝殻で、ともに主成分は炭酸カルシウムです。漢方薬では 特に精神安定作用を目的とする処方に配合されています。竜骨や牡蛎の含まれた方剤は腹部の動悸(腹部を触ると心窩部や臍上に動悸を強く触れます)、恐い夢や追いかけられる夢をよくみる、物事に驚きやすいといった精神不安定感がその使用目標となります。

<柴胡加竜骨牡蛎湯エキスについて>

 コタロー柴胡加竜骨牡蛎湯には緩下作用のある大黄が含まれています。大黄には精神安定作用もありますが、便秘がなければ大黄が含まれていないツムラ柴胡加竜骨牡蛎湯が無難です。

<レセプト上の注意>

 酸棗仁湯エキス、コタロー柴胡桂枝乾姜湯エキス、コタロー柴胡加竜骨牡蛎湯エキスはすべて不眠の適応があります。ツムラ柴胡加竜骨牡蛎湯エキスとツムラ桂枝加竜骨牡蛎湯は神経衰弱やヒステリーの適応しかありませんのでご注意ください。

(文責:漢方診療科 中村佳子)

西洋医学的な発想

〜不眠症について〜
(1) 基礎疾患があるとき
 → 原因疾患(痒みや痛みなどの身体症状)への対応を行う。

しかし、不眠は辛い症状なので不眠を改善し、良眠を得られるようにすると原因疾患に対しても良い影響がみられる。
(2) 入眠困難(寝付けない)
 → 一般的な不眠症はこのタイプが多い。

超短時間型睡眠薬(アモバン ハルシオン マイスリー) Or
短時間型型睡眠薬(リスミー レンドルミン エバミール )
入眠困難+熟眠困難=レンドルミン…半減期7時間と一般的な睡眠時間にほぼ一致
入眠困難+熟眠困難+不安感+イライラ感=ドラ―ル…睡眠薬+安定剤的作用を期待
※注意を要する薬
ドラ―ル 長時間型睡眠薬(半減期約36時間)の中で比較的軽い薬。高齢者にも使いやすいが、ふらつきやハングオーバーに注意。
ハルシオン 効果強いが依存性あり。中断時に反跳性の不眠が強くなる。長期間使用には不適。(長期間使用する場合はアモバン、マイスリーから開始する)
デパス 筋弛緩作用が強い。高齢者では夜間転倒の原因になる。睡眠薬としては不適。
(3) 中途覚醒・早朝覚醒・浅眠傾向
 → 一般の高齢者にみられる。
   もともとこういった睡眠パターンを呈する人もいる。
   うつ病の可能性もある。要鑑別診断!

抑うつ(−) 中間型睡眠薬(ネルボン ベンザリン ユーロジン ロヒプノール)
抑うつ(+) 抗うつ剤+睡眠薬(中間型より選ぶことが多い)
抗うつ剤はSSRI(パキシル デプロメール)が第一選択
少量から開始
副作用として吐気あり(ガスモチン、プリンぺランなど併用)
抗うつ剤は効果発現が遅い(1〜4週間)
効果発現まできちんと服用することが大切
※うつの鑑別
うつかどうか、外来での簡単なスクリーニングとして、「以前楽しいと感じていたことや興味があったことに対して今はどうですか?」と聞いてみる。
「楽しくなくなった。興味が湧かなくなった。」と答えた場合うつの可能性がある。
 睡眠薬・抗うつ剤・抗不安薬はいずれも漢方薬との併用は問題ない。

(文責:漢方診療科 中村佳子  監修:心療内科 橋口悦子)

〜 部長のたわごと(2) 睡眠薬と漢方薬 〜
 漢方治療の基本方針は、虚弱には元気をつけ、亢進状態は抑制する(虚する者は補い、実する者は瀉す)こと。つまりは生体のバランスをニュートラルに導き、結果的に病態を緩和します。酸棗仁湯に含まれるサンソウニンは不眠だけではなく眠り過ぎにも有効で、睡眠異常の正常化薬。さらに疲れを癒し過剰な熱は冷まして潤いをもたらす生薬を含み、結果的に入眠しやすくなると考えられます。柴胡は漢方医学的な“肝”(疳に繋がる)の昂ぶりを鎮める作用があり、イライラを伴う不眠には柴胡含有の柴胡加竜骨牡蛎湯(実の病態向き)や柴胡桂枝乾姜湯(虚向き)が有効。いずれも直接的な催眠剤ではないので、眠前投与とは限らず、1日3回服用も標準的使用法です。ハングオーバーや脱力感、薬物依存などの心配はありません。日常生活に悪影響がないだけではなく、全身的な体調も整えます。
(文責:三潴忠道)

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