015.高熱を伴う薬剤アレルギーの症例:漢方アラカルト
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関節リウマチで当科通院中の64歳の女性が、ある時近医でボルタレンを処方されました。その当日から全身に皮疹が出現したのですが、翌日には治ったという事でその後も数回使用。その度に発熱、嘔吐、皮疹等が出現しました。数日後にようやく「これはおかしい」と当科を受診。血液検査で肝、腎障害とCRPの上昇を認め、薬剤アレルギーを疑い入院の上、使用中の薬剤を中断し、経過観察をすることになりました。
入院時には症状は軽減していたのですが、夜半から誘因なく皮疹と高熱が出現して、患者さんはしきりに解熱剤を要求されました。しかし今回はNSAIDへの薬剤アレルギーが疑われるわけで、解熱剤を使える状況ではありません。すると今度は「それなら昨日ステロイドを使えば抑えられるといったではないか。すぐよこせ!」とえらい剣幕です。膠原病の方の中には、稀にこういう形で急速に発症される血管炎様の病態もあります。
薬剤再投与なく症状が増悪した事からも、アレルギーと決め付けて迂闊にステロイド投与しては、後の診断治療に支障をきたしかねません。
この時の患者さんは非常に強い口渇を訴え、顔も赤く全身に強いほてり感があり、身悶えするような状況で精神不穏も伴っていました。唇や舌は熱く乾燥して、ちょっと切れると血を噴き出し、また脈は浮いて大きく、トウトウと打っていました。
漢方診療学的には、陽性病態の極みである陽明病期にあたり、その中でも体表近くに強い熱のこもった病態と考えられます。これはまさに「白虎湯」の典型的な病態です。
患者さんは「こんな時に呑気に漢方薬なんて」とたいそう不満げでしたが、早速煎じて飲んでもらったところ、2回ほどの服用ですっかり熱も下がり、皮疹や掻痒感も軽快。口渇、ほてり等は殆んど消失しました。その後は順調に改善し、無事退院となりました。
発熱というと風邪でおなじみの「葛根湯」や「麻黄湯」が有名ですが、今回使った「白虎湯」(エキス剤では、さらに脱水傾向の強い例に用いる「白虎加人参湯」が手に入ります)は、悪寒や発熱に加えて、強い口渇があり、汗や尿がよく出ることが目標になります。漢方薬は一般に「のんびり飲まないと効かない」と思われがちですが、これらの方剤は特に急性のものには時に非常に速やかに奏効します。
白虎湯はこれからの季節ですと、「暑気あたり」などにも応用が利く処方です。
構成は知母、粳米、石膏、甘草の4種類。漢方薬の中でも副作用を起こす可能性の低い薬物です。特にご高齢の方やもともと体力の弱い方などで、上記の病態を示された患者さんには、NSAIDに手を伸ばす前に試みる価値がある処方だと思います。
(南澤) |
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