012.極度の倦怠感をきたした症例:漢方アラカルト
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「きつい〜、きつい〜」と医者に助けを求める患者さん。「それじゃ検査してみましょう。」「うぅ〜ん。検査結果では、どこも悪くないんだけどね〜。」「点滴でもしてみますか?」という具合で、原因の特定できない倦怠感ほど医者にとって厄介な代物はない。ストレス社会、あるいは食生活や生活様式の変化など様々な原因があるだろうが、この「だるい」という症状で苦しんでいる人はとっても多いわけである。そんなもの病気じゃない、といってしまえばそれまで、しかし、苦しんでいるのは患者さん。倦怠感を漢方医学的にみると、いろいろな病態が考えられる。その一例をお示ししたい。
「倦怠感」を主訴に来院された23才の女性。他に月経不順もある。3年前から、体がだんだん弱くなってきた。風邪を引きやすく、体力がなくなり、頭痛と冷え性が強い。外出してもすぐに帰宅し、疲れて横になってしまう。1日うちで横になっていることの方が多い。月経も1年くらい前から、3カ月に1回くらいとなった。X年2月18日に当科を受診。
身長は153cm。体重は46kg。体温35.9℃と平熱。血圧116/72mmHg、脈拍79/分・整と正常。顔面は紅潮気味。語勢は弱く、「蚊の鳴くような」声で聞き取りにくい。とにかく疲れやすくて、朝はだるくてなかなか起きられない。日中も眠くてしょうがない。汗をかきやすくて寝汗もひどい。夏は暑くてたえられない。冬はとっても寒がりで腰から下が冷えて、手足も冷たくなってしまう。電気毛布は春先まで離せない。ときどきのぼせて赤ら顔になる。うすい尿が頻回にでる。脈は弱々しく触れにくい。
倦怠感には、補中益気湯や十全大補湯といった有名な薬がある。しかし、この患者さんの場合、気力体力ともに非常に疲弊している。とてもそんな薬では改善しそうもない。漢方的には、極度の虚証で冷えも強い。そこで、通脈四逆湯という薬を処方した。乾姜(生姜をむしたもので体の芯を温める作用が強い)がたくさん入っていて、普通の人には、辛くてとても飲めるものではない。1週間後、寝る前にのむと手足が暖まる。2週間後、「家族が風邪にかかったが、私は風邪をひかなかった。」と嬉しそう。いつも悩まされていた頭痛がなくなった。1カ月後、久々に月経があった。だるさがなくなって、体がすごく軽くなった。4月、体調が良くてよく外出するようになった。月経も順調。6月、「元気になったね。」と近所の人にもよく言われる。以後、倦怠感もなく、経過は良好で月経も順調である。
さて、この通脈四逆湯という薬は、乾姜と附子で体の芯から、強い「寒(冷え)」をとってゆく薬。漢方的でいう「寒」という概念は、単なる冷え性とはちがい、心身ともに極度に抵抗力を失った状態と考えられる。これから本格的な夏をむかえて、暑いからといって、冷たいものばかりを食べて、冷房にガンガンあたっていると、知らず知らずのうちに、この「寒」に侵されてゆく。ご注意を!
(古田) |
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