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今回は、月経困難症で軽度の抑うつ症状も認めた症例についてご紹介いたします。
患者さんは18歳の女性です。13歳で初潮を迎えましたが、中学生の頃は月経痛は認めませんでした。高校入学後より月経痛が起こるようになり、特に月経の初日から3日目まで下腹部の鈍痛がずっと続き気分が不安定になっていました。産婦人科に通院して1年ほど治療を受けたが改善せず、月経の初日と2日目にはいつもボルタレンを服用するようになりました。そして、こんな状態が長く続いたせいか、人と会ったり、話をしたりするのが嫌になり、外出もあまりせず次第に抑うつ的になっていました。
初診のときには、やや表情険しく声の調子は沈み、抑うつ気分が感じられました(精神科医から軽い抗うつ剤も投与されていました)。手足は冷たく、自覚的にも寒がりであるということでした。漢方医学的には腹部に季肋下のやや陥凹と弱い抵抗を認め、臍上に腹部大動脈の拍動を触知しました。少陽の虚証で「寒」があり精神症状も伴うことから、柴胡桂枝乾姜湯を投与し、月経痛が強いときには芍薬甘草附子湯を頓服するようにしました。なお、抗うつ剤は中止しました。服用1週間後には、手が温まって来ていることを自覚しました。そして、服用後最初の月経のときには腹痛が強くボルタレンを1回服用しましたが、その後は徐々に体も温まり、月経痛も軽くなっています(ボルタレンはその後1度も使用していません)。表情も明るくなり現在も通院中です。
一般に「月経困難症」の原因は、月経時の子宮筋の過度の攣縮や子宮筋層等の血管の攣縮、自律神経系の機能失調等が考えられていますが定説はなく、従って治療法も一定していないようです。西洋医学的には月経困難症と軽症うつ病が合併した本例のような場合でも、漢方学的に「体の中の冷えが起こしている状態」と解釈し、その状態にあった漢方方剤を投与すれば、このように早期に一度に治療が出来ることがあります。月経困難症に対する漢方治療にはこの他にも、体質改善を目標としては、貧血傾向で冷え性の方に当帰芍薬散が、少しのぼせ症で体力のある方に桂枝茯苓丸がよく使われています。また、月経時の下腹部の疼痛には筋肉の緊張をほぐす芍薬甘草湯、下腹部が張った感じを伴えば当帰建中湯、さらに寒(冷え)を伴うときにはそれぞれに附子を加えた処方が有効なことが多いようです。
(川口) |