症 例 332 解 答
食道裂孔ヘルニア(滑脱型)

画像所見 胸部単純X線写真

 胸写正面にて、心陰影左縁と、下行大動脈左縁との間に比較的鮮明な孤状を描く陰影が描出されている。よく見ると下行大動脈と重なる位置に,niveauを有するガス像が認められる。側面像にても心臓の後方にniveauを有する淡いmassが見られる。
 このlineは、食道裂孔ヘルニアにより胸腔内に突出した胃の左縁である。

消化管透視

 食道裂孔ヘルニア(滑脱型)が認められる.


食道裂孔ヘルニア(滑脱型)
esohageal hiatal hernia
(sliding type)

概 念
 食道は後縦隔、大動脈前面を下降して走り、食道裂孔を通って腹腔内に出て2〜4cmの腹部食道を形成して胃噴門部に至る。食道裂孔は横隔膜脚部によって形成されている。食道裂孔部で胸腔側と腹腔側の横筋筋膜が癒合した部位からコラーゲン線維が伸び、食道の筋膜を貫いて、粘膜下に固定して終わるが、これが横隔食道靭帯である。
 食道裂孔ヘルニアには2つの型がある。傍食道裂孔ヘルニアと滑脱型食道ヘルニアである。前者は食道裂孔ヘルニアの4〜8%と稀な疾患で、食道前方左側の横隔食道靭帯の限局性の脆弱化によって起こる。胃が逆転した形で脱出するが、食道胃接合部は正常位置に固定しており、ヘルニアサックが全周性に存在する。
 後者は食道裂孔ヘルニアのほとんどを占める。横隔食道靭帯の全周が弛緩して起こり、食道胃接合部が縦隔内に脱出する。ヘルニアの前、側壁にはヘルニアサックが存在するが、後壁にはヘルニアサックは存在しない。
臨床像
 上部消化管検査の際に偶然診断されることが多い。以前は滑脱型食道裂孔ヘルニアすなわち逆流性食道炎と考えられていたが、食道炎を起こす頻度は5%程度とされる。大部分のものは他の合併症を起こす危険も少なく治療の必要はない。
画像診断

(胸部単純X線)
 正面像で心陰影に重なるように見えるair-fluid levelを呈する腫瘤であり、側面像で心の後方に位置する.鑑別としては,食道アカラシア、食道癌による食道の拡張や、縦隔内のabcessが挙げられる.
これらの食道疾患の鑑別手段として、また腫瘍と食道との関係を見るためにも、まず食道透視の適応を考える価値がある.
 食道裂孔ヘルニアの胸部X線像〜
 立位での胸部X線写真での脱胃やその胃泡、心陰影に重なる鏡面像が見られることがあり、特に側面で明瞭となることが多い。
 食道アカラシアのX線像〜
 胸部正面X線像で、食道の拡張の著明な症例では、食道の拡張による縦隔の拡大や食道内食物停滞による鏡面像が認められることがある。また,一般には胃泡が欠如するか小さいことが多い。
 
本症例のようにair-fluid levelを呈する腫瘤や、或は気管の走行など、認識しにくい薄い陰影を見る時は、フィルムをねかせてみると読みやすいことがある。

(消化管造影X線検査)
 T度 食道胃接合部の偏位、拡張、蛇行を認める程度の軽度なもの
 U度 食道胃接合部の偏位、胃噴門部の一部の脱出を認める中等度なもの
 V度 胃噴門部、体部の脱出や、胃全体の脱出を認める高度なもの



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