腸閉塞

「絞扼性」は命の危険も 腸閉塞

  • 2019.1.9
外科
医長 由茅隆文 医師

飯塚病院の医師をはじめとするスタッフが、医療に関する情報や病気の予防法などを分かりやすく解説する西日本新聞の連載「あなたのカルテ」の転載です(西日本新聞筑豊版 毎週水曜日連載中)。



腸閉塞

西日本新聞 2017年7月19日朝刊掲載

Q. 先日、父が腸閉塞になり緊急手術を受けました。一方、知人は腸閉塞で何度か入院しているのですが、手術を受けずに良くなっています。手術が必要な場合と不要な場合の違いは何でしょうか?

A. 食べたものは胃腸で消化、吸収された後に大便となり肛門から排せつされます。何らかの原因で、この流れがスムーズに行われなくなった状態を腸閉塞といいます。腸閉塞になると、おならが出ない、腹痛、嘔吐など胃腸の症状が現れます。腸閉塞は珍しい病気ではなく、当院でも年間200~300人の患者さんを診療しており、時に緊急手術も行っています。
腸閉塞の原因はいろいろありますが、大きく分けると「単純性腸閉塞」と「絞扼性(こうやくせい)腸閉塞」の二つに分類されます。
 単純性腸閉塞は、腸閉塞全体の約8割を占め、多くは過去のおなかの手術による癒着が原因で起こります。腸は本来おなかの中で自由に動いているのですが、癒着すると動きが悪くなり、さらにそこがむくむと食べ物がうまく流れなくなってしまいます。この場合、細いチューブを鼻から入れ、腸にたまった物を排出する減圧治療を行います。また、特殊な装置を用いて、腸に高濃度の酸素を送る高気圧酸素治療も有効な治療法です。当院でもこの治療が可能です。
 これらの治療によって、単純性腸閉塞のうち8割程度は手術をせずに治療をすることが可能です。うまくいかない場合や、治ってもすぐに再発する場合は手術が必要になることがあります。

高気圧酸素治療装置
高気圧酸素治療装置
 

 一方、絞扼性腸閉塞は、腸のねじれなどが原因で腸に血液が流れなくなり、腸が腐ってしまう病気です。腸閉塞の1~2割程度で、一刻も早く手術を行わなければ命に関わります。手術では腐った腸を切除する必要がありますが、症状が進行する前であれば切除せずに済む場合もあります。
 このように、同じ腸閉塞という病名でも、二つの疾患は緊急度が大きく異なります。しかし、厄介なことに、単純性腸閉塞か、絞扼性腸閉塞かは症状では見分けがほとんどつきません。以前単純性腸閉塞を起こした方も、次に発症した時には絞扼性腸閉塞だったということもあるのです。
 絞扼性腸閉塞と単純性腸閉塞を見分けるためには、CT検査が非常に有用です。造影剤という薬を用いたCT検査で腸のねじれ具合や血液の流れ具合を判断し、絞扼性腸閉塞の診断に役立てています。当院の救命救急センターでもCT検査が24時間可能です。
 また、近年では身体への負担が少ない手術として、腹腔鏡手術が増えてきています。絞扼性腸閉塞は腹腔鏡手術が難しいとされていますが、早期に診断できれば腹腔鏡手術を行えることもあります。
 腸閉塞では、いかに早く絞扼性腸閉塞を診断するかが非常に重要です。お腹の手術を受けたことがある方は、おならが出なくなり、嘔吐を繰り返すような場合にはすぐに病院を受診してください。

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