めまいと食養生

  • 2018.07.25
漢方診療科
診療部長 井上 博喜 医師

飯塚病院の医師をはじめとするスタッフが、医療に関する情報や病気の予防法などを分かりやすく解説する西日本新聞の連載「あなたのカルテ」の転載です(西日本新聞筑豊版 毎週水曜日連載中)。



めまいと食養生

西日本新聞 2017年8月30日朝刊掲載

Q. 「食養生」という言葉を聞きます。食べるもので体調が変化することはあるのでしょうか?

A. 食養生とは、大辞林に「食物の栄養を考慮しながら、病気の予防・治療をはかること」と記載されています。食事内容の変化が体調に大きく影響した事例をご紹介します。
 60代の男性が、フワフワするようなめまいのため、漢方診療科を受診されました。真武湯(しんぶとう)という漢方薬を処方し、服用してもらいました。患者さんの感覚として、症状は一番ひどい状態の2割程度で落ち着いていましたが、1年後の5月、初診時のような強いめまいを訴えられました。
 突然悪くなったため、何かきっかけがあるのではないかと尋ねてみると、「ゴールデンウィークにバーベキューをした後から調子が悪い」とのことでした。
 「その時に何かしましたか?」とさらに尋ねたところ、「立っている時間が長かったのが悪かったのかなあ?」との返答。この方に限らず、患者さんは体に悪いことをしていても、体に悪いとは意識していないことが多いようです。何回かやりとりをする中で、「そういえば、ビールを沢山飲みました」と答えられました。
 問診を続けたところ、「暖かくなり、冷たい飲み物(ビール、アイスコーヒー、焼酎の氷入り水割など)をよく飲むようになりました。生野菜や果物は好きで昔からよく食べています」などと体を冷やす食生活が明らかになりました。
 漢方薬を変更せずに食生活の指導を行ったところ、めまいは5日後には2割程度に改善し、数ヶ月後には消失しました。

 

本当の冷え性は夏に現れる

 体が冷えていると、症状がなかなか治らないこともあります。このため、漢方では「冷え」の有無を重視します。この方は体が冷えていたため、体を温める漢方薬である真武湯を処方していたのですが、体を冷やす食事により漢方薬の効果が弱くなったと考えられます。
 体を温める食材(陽性食品)と体を冷やす食材(陰性食品)の一覧を掲載しました。ご参照ください。

【陽性食品】

  • 火を通した食べ物(煮物)
  • 天日に干したもの(干物、昆布、きくらげ、かんぴょう、干し椎茸)
  • 漬物(古漬)
  • 温かいもの

【陰性食品】

  • 生もの(生野菜、果物、刺身など)
  • 冷たいもの(牛乳、ジュース、氷菓子、アイスクリーム、氷水)
  • 砂糖(ケーキ、あんこ、飴玉)
  • 酢(酢の物、健康食品の酢など)
体を温める食材(陽性食品)と体を冷やす食材(陰性食品)

 めまいには今回の真武湯のほかに、苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)や五苓散(ごれいさん)もよく使われますので、それぞれのポイントをお示しします。

苓桂朮甘湯

立ちくらみに用いる。足は冷えるが手はあまり冷えない「冷えのぼせ」があることが多い。

五苓散

クルクル回るめまいに用いる。体に冷えが無いため、手も足も冷えないことが多い。

真武湯

フワフワするめまいに用いる。全身に冷えがあるため、手も足も冷えることが多い。

めまいによく使われる漢方薬

 現代の日本では、体を冷やす陰性食品の過剰摂取やクーラー、冷蔵庫の普及、運動不足、ストレスなどによって、夏でも体が冷えやすくなっています。本当の冷え症は夏に現れます。冷え症で困っている方やいろいろな症状がなかなか改善しない方は、陰性食品の過剰摂取を控えるなど食生活の改善を考えてみてはいかがでしょうか。

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