ふくろう症候群

  • 2018.06.20
漢方診療科
医長 後藤 雄輔 医師

飯塚病院の医師をはじめとするスタッフが、医療に関する情報や病気の予防法などを分かりやすく解説する西日本新聞の連載「あなたのカルテ」の転載です(西日本新聞筑豊版 毎週水曜日連載中)。



ふくろう症候群

西日本新聞 2017年5月17日朝刊掲載

Q.  毎朝体調が優れず、起きるのがつらいです。昼以降は何とか元気になるのですが、朝から元気でいられる方法はないでしょうか?

A. 朝、起きるのがつらく、寝坊しがち。起きた後もボーっとして、スッキリしない。食欲がなく朝食は食べない、もしくは食べたくないが頑張って食べる。学校や仕事に行っても午前中は元気がなく、午後にやっと活気が出る。夜は元気で仕事も勉強もはかどり、早く床に就いても目がさえて眠れない。
 このような体質の方は意外と多く、程度が激しい場合は日常生活に支障を来すことも少なくありません。現代医学で「起立性調節障害」と言われるもので、自律神経失調症の一つです。夜間に元気であることから「ふくろう症候群」の別名があります。
 小児や若者に多く、その随伴症状は頭痛、めまい、疲れやすさ、立ちくらみ、顔色が青白い―などがあります。
 めまいは、急に立ち上がると目の前が暗くなり、気が遠くなって立っていられなくなり、耳が聞こえづらくなったりします。心臓がドキドキして、顔色が青白くなることもあります。他にも車酔いしやすかったり、横になって胃のあたりを軽くたたくとチャプチャプと音がしたり、舌に歯型がついていることが多いです。

起立性調節障害(若年者に多い)

主な症状

朝起きるのがつらい、朝は元気がない、朝は食欲がない、頭痛、めまい、立つと目の前が暗くなる、顔色が悪い、疲れやすい、昼以降は元気、夜は目がさえて寝るのが遅い、雨降り前や雨の日は体調不良、車酔いしやすい

身体の特徴

胃のあたりでチャプチャプ水の音がする、舌に歯形がある

起立性調整障害の症状・身体の特徴

朝の体調不良に漢方が有効

 これらの症状は、漢方医学的には水分代謝が悪いために起こるものだと考えます。よって、雨が降りそうな曇りの日や雨の日に症状が悪化することが多いという特徴があります。程度が軽い場合は社会生活に支障なく過ごすことができますが、重症になると学校生活や仕事に影響します。このような場合は治療が必要となるでしょう。
 起立性調節障害が不登校やひきこもりの原因の場合は、治療により体調が良くなることで社会復帰できることもあります。周囲を含め、「身体的な問題」であると認識することが重要で、安易に「怠けもの」とか「気持ちの問題」と決めつけることは避けるべきです。
 治療には水分代謝を調節する漢方薬の苓桂朮甘湯が有効である場合があります。副作用が少なく、小児にも安心して使用できます。早い場合は、飲み始めから数日で効果を実感できることもあります。
 五苓散が有効である場合もあります。五苓散も水分代謝を調節する薬ですが、雨降り前に悪化する頭痛やめまい、その他の体調不良や、女性の月経前のむくみによく効きます。このようなときには咽が渇きやすく、飲む水分量に比べると尿の量が少ないのが特徴です。

 養生のために忘れてならないのが生活習慣の見直しです。食事は規則正しく取り、適度な運動をすることも重要です。夜の方が元気だからといって夜更かししてしまっては社会の生活リズムと時間のずれが生じてしまいます。夜は早めに寝る準備をし、布団に入ったらスマートフォンを見ないようにしてください。決まった時間に起きるための努力も必要です。

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