春の体調不良

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  • 2018.04.04
漢方診療科 部長 田原 英一 医師
漢方診療科 部長 田原 英一 医師

飯塚病院の医師をはじめとするスタッフが、医療に関する情報や病気の予防法などを分かりやすく解説する西日本新聞の連載「あなたのカルテ」の転載です(西日本新聞筑豊版 毎週水曜日連載中)。



春の体調不良

西日本新聞 2012年5月17日朝刊掲載

Q. 春だというのになんとなく気分がすぐれません。病院で検査をしてもらいましたが、特別な異常はないと言われました。

A. 現代医学では説明がつかない不調が漢方医学的に説明、治療できることがあります。草木が芽吹き、生き物たちが活動を始める春は、健康な人にはさわやかな季節なのですが、もともと虚弱な、漢方でいうところの気血のめぐりの悪い人の中には、増えていく周りの陽気についていけない人がいます。環境の変化によるといわれる五月病も、こうした気候の変化を伴っての不調ではないかと思います。
 さて、ではこのような春の不調に対して漢方ではどのような治療が考えられるでしょうか。いくつかのタイプにわけて紹介します。
 われわれ漢方医がもっとも遭遇するのは不安が強いタイプ。心配性で、ちょっとしたことでも動悸(どうき)がしたり、眠れなくなったりします。この場合、足の冷えがあって神経質で細かい虚弱なタイプには、柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)がよいでしょう。おなかの診察をすると両季肋部(肋骨の下あたり)の緊張をごくわずかに触知します。
 もう少し体力がありそうなら柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)がよいかもしれません。典型的な腹部所見では、腹部大動脈の拍動を強く触れます。拍動が触れるのはあたりまえだろう、と思われるかもしれませんが、「よくこのあたり(上腹部)で動悸がする」と自覚がある方も多いようです。
 次に、怒りを抑え切れなくて、爆発しているタイプです。加味逍遥散(かみしょうようさん)が代表的な処方です。典型的には、冷えがなく、あるいは手足が冷えやすいのに、のぼせがある。虚弱なタイプとされていますが、比較的元気な人にも有効なことが多いように感じています。もっと頭に血が上って、カッカしている場合は、黄連解毒湯(おうれんげどくとう)がよいでしょう。
 最後に、鬱々としてしまうタイプ。代表的な処方に四逆散(しぎゃくさん)が挙げられます。このタイプは、緊張が強く、手足の裏に汗をかきやすい。腹部所見では、緊張が強いため、両季肋部が強く張って、腹直筋がピーンとつっぱっています。
 抑鬱感がもっと強くなって葛藤を生じ、怒りをぐっと堪えているようなタイプには大柴胡湯(だいさいことう)がいいでしょう。この場合、両季肋部がガチガチに張っていることが多いです。ただし、このタイプは我慢を重ねてしまい、本当に悪くなるまで病院を訪れる頻度は低いようです。

イメージ:春の体調不良に効く漢方薬一覧

物言わぬは腹膨るる

 「物言わぬは腹膨るる」と兼好法師も申しておりますので、さまざまなストレスで気血のめぐりが悪い方は、お腹に所見がたまるようです。もっともこのお話をすると、「では何段目から痩せたらいいのでしょうか?」と質問されました。自分は三段腹ですが何か?と自己主張のようです。
 ともあれ、病院で異常がないと言われたけれどなんとなく不調が続くときや、診断がついたけれども対処法がないとき、あるいは西洋医学の副作用でお困りの際は漢方治療をお考えいただいてはいかがでしょうか。もちろん、西洋医学的にきちんと検査をしておくことが必要なことは言うまでもありませんが。

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