心身症

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  • 2018.03.07
心療内科 部長 小幡 哲嗣 医師
心療内科 部長 小幡 哲嗣 医師

飯塚病院の医師をはじめとするスタッフが、医療に関する情報や病気の予防法などを分かりやすく解説する西日本新聞の連載「あなたのカルテ」の転載です(西日本新聞筑豊版 毎週水曜日連載中)。



心身症

西日本新聞 2016年3月9日朝刊掲載

Q. 体調が悪く病院で診察を受けましたが、検査では異常な数値はありませんでした。医師からは「心身症でしょう」と言われました。どんな病気なのでしょうか?

A. 心身症は、発症や経過に心の問題や生活環境が密接に関係する身体疾患の総称。つまり「病名」ではなく「病態」を説明する概念です。心身症は精神障害ではなく身体疾患なので、主として扱う診療科は精神科ではなく心療内科です。
 胃潰瘍、気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎は代表的な心身症ですが、近年は薬物治療などの進歩で、心理面や社会面をあまり扱うことなくコントロールできるようになりました。胃潰瘍などで心療内科を受診される患者さんは減っています。
 一方、検査ではっきりとした異常を認めない病気(機能性疾患)が増加しています。
 胃の痛みやむかつきなどの症状があるのに胃カメラなどの検査では異常が出ない「機能性ディスペプシア」、腹痛や下痢、便秘を繰り返すのに大腸検査で異常がない「過敏性腸症候群」、体の痛みがあるのに血液検査やエックス線検査で異常を認めない「慢性疼痛(とうつう)」などがその例です。
 これらの病気に対する薬物治療も進歩していますが、薬物だけでは困難な場合も多く、心理社会面に配慮した治療が必要です。

◆代表的な心身症
循環器系 本態性高血圧症、起立性調節障害
呼吸器系 気管支喘息、過換気症候群、神経性咳嗽
消化器系 消化性潰瘍、機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群、呑気症
神経筋肉系 片頭痛、緊張型頭痛、痙性斜頚、書痙、慢性疼痛、自律神経失調症
内分泌・代謝系 糖尿病、単純性肥満症、バセドウ病、摂食障害
皮膚・泌尿器系  円形脱毛症、慢性蕁麻疹、神経性頻尿、インポテンツ

心と環境起因の身体疾患

 心身症の発症や経過に影響を与える社会的要因は、就職、離婚、転居、身近な人の死などのライフイベントや、仕事の負担、家庭問題、職場や学校での対人関係など、日常生活のストレスが挙げられます。さらに、不安、緊張、怒り、気分の落ち込みなどの心理状態は、症状の強さと密接に関係します。
 心療内科では初診時、それぞれの患者さんの生活状況や心理状態を詳しくお聞きし、病気に影響している心理社会面の問題を明らかにします。その上で、患者さん自身で解決できると思われる問題についてアドバイスをします。
 薬物治療も行いますが、心療内科での治療の主役は患者さん自身。薬物治療は問題解決をサポートするための手段に過ぎません。薬物の効果でいったん症状が改善したとしても、心理社会面の問題が根本的に解決していなければ、そのうち再燃、再発するリスクが高いのです。
 心身症になりやすい人の一例に、自らの感情を自覚、認知し、表現することが苦手な人が挙げられます。感情を認知することの障害で、アレキシサイミア(失感情症)と呼ばれます。アレキシサイミアの人は、悲しみや怒りなどの感情を意識で認識し、言葉で表現する代わりに、身体で表現してしまうという考察もあります。
 心療内科での診察、治療に加え、リラクセーション法などの心理療法が有効と考えられる場合などは、臨床心理士にカウンセリングを依頼することもあります。

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