食道がん ~早期発見で低侵襲手術を~

  • 2017.12.06
外科 診療部長 木村 和恵 医師

飯塚病院の医師をはじめとするスタッフが、医療に関する情報や病気の予防法などを分かりやすく解説する西日本新聞の連載「あなたのカルテ」の転載です(西日本新聞筑豊版 毎週水曜日連載中)。



食道がん

西日本新聞 2015年7月1日朝刊掲載

Q. 知人が食道がんと診断されました。どんな人が食道がんになるのでしょうか。治療方法や予防策も教えてください。

A. 食道がんの患者さんは女性より男性に、年齢でみると比較的高齢の人に多いとされます。原因の一つとみられるのがたばこと酒です。近年、アルコールを分解する酵素やアルコールの代謝産物(アセトアルデヒド)を分解する酵素の遺伝学的異常が関連していることが分かってきました。酵素異常がある人はがんになりやすいとされています。酒を飲むと赤くなる人はその可能性があります。
 たばこと酒のいずれか一方でもがんの危険因子となりますが、両方の習慣を持つ人はより食道がんのリスクが高いと言えます。例えば、1日平均でたばこ40本と酒4合を25年間続けた人は、たばこも酒も飲まない人の50倍も食道がんにかかりやすいという報告があります。
 食道がんの症状は食事のつかえ、げっぷ、声のかすれなどが挙げられますが、比較的症状が出にくく、症状が出た時はがんが進行していることが多いです。
 食道がんの治療法には内視鏡治療、手術、抗がん剤治療、放射線治療があり、進行度によって治療法は異なります。今回は手術治療について説明します。
 手術は体からがんを切り取るもので、食道がんに対する最も標準的な治療法です。がんを含めて食道を切除し、同時に、リンパ節を含む周囲の組織を切除します(リンパ節郭清)。食道を切った後には、胃や腸を使って食物の通る新しい道をつくる再建手術を行います。


早期発見で低侵襲手術を

 食道がんを切り取る時には、これまでは胸やおなかを大きく切り開ける(開胸・開腹)手術が一般的でした。こうした手術は体への負担が大きく、肺炎になったり、傷の痛みが長引いたりすることが多くみられました。
 そのため、最近では体への負担を少なくする「低侵襲手術」として、小さな傷で切除、再建する内視鏡外科手術が行われるようになりました。内視鏡外科手術とは胸腔鏡で食道がんを切除し、腹腔鏡で再建を行う方法です。傷が小さいので痛みが以前よりは少なく、術後の回復が早くなっています。
 しかし、食道がんが周囲へ広がっている場合には、従来通りの開胸、開腹手術をすることもあります。食道は頸部、胸部、腹部にわたり、各部位によってがんの進行の状況が異なるので、がんの発生部位によって手術方法が異なります。
 進行した食道がんは手術だけでなく、抗がん剤治療と放射線治療が必要となります。また、もっと進行し、他の臓器に転移している場合には手術ができないこともあります。
 現在、日本全国では食道がん手術の約3割がこの内視鏡外科手術で行われています。当院は、日本食道学会食道科認定医1 名、日本内視鏡外科学会技術認定医が2名在籍しており、食道疾患に対しても安全な内視鏡下手術を提供しています。
 食道がんの予防は難しいですが、たばこや酒をたくさん飲む人は消化管内視鏡検査を受けていただき、早期発見を心がけてください。

関連記事