インフルエンザと漢方

  • 2017.11.16
漢方診療科 診療部長 井上 博喜医師

飯塚病院の医師をはじめとするスタッフが、医療に関する情報や病気の予防法などを分かりやすく解説する西日本新聞の連載「あなたのカルテ」の転載です(西日本新聞筑豊版 毎週水曜日連載中)。



インフルエンザと漢方

西日本新聞 2015年1月7日朝刊掲載

Q.  インフルエンザに効く漢方薬はありますか。

A. インフルエンザはインフルエンザウイルスによる感染症で、普通のかぜと異なり、38度以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛など全身に激しい症状が現れます。
 以前は、症状や季節、周辺の流行情報などからインフルエンザと診断していましたが、現在はインフルエンザ迅速診断キットを使用し、15分から30分程度で結果が出るようになりました。また、治療も以前は「水分を十分とって家で安静に寝ること」でしたが、発病初期(一般に48時間以内)であれば、タミフルに代表される抗インフルエンザ薬を用いるようになりました。
 こうした変化は劇的ですが、問題点もあります。例えば迅速診断キットは、特に発病初期に、本当はインフルエンザなのに検査で陰性と出る場合があります。抗インフルエンザ薬は、異常行動の恐れから小児・未成年者の内服に注意が必要です。


体温め発汗・解熱促す

 一方、日本では昔からインフルエンザ様急性熱性疾患に漢方薬を使用してきました。特におうとうに関しては、約2000年前に書かれた「しょうかんろん」という書物に「寒気や頭痛、発熱、腰痛、関節痛があって、汗が出ていない場合は麻黄湯を用いなさい」と書かれていて、インフルエンザの症状と合致します。そのため麻黄湯は、インフルエンザに対する臨床試験がいくつか行われており、抗インフルエンザ薬と比較しても、同等かそれ以上の解熱効果が報告されています。
 そこで小児や未成年者で抗インフルエンザ薬を使いにくかったり、迅速診断キットで陰性となったりした場合、漢方薬を使うのが適していると思います。
 麻黄湯の他にインフルエンザに用いる漢方薬を紹介します。一つは、強いのどの渇きがあり、激しい症状のためじっと寝ていられないほど苦しむ場合はたいせいりゅうとうを使います。

 ここで注意が必要なのは、麻黄湯と大青竜湯は、発汗作用が強い薬ということです。多量の汗をかくと体力が落ちて、かえって状態が悪くなりますので、内服前から汗をかいている人や体力が衰えている人には適していません。内服前から汗をかいている人には、けいえっいっとうを使います。
 高齢者や体力が落ちている人は、熱が出ていても寒がったり、横になりたいほどのだるさを伴ったりする場合があります。そのようなときはおうさいしんとうの使用が適しています。

 最後に、漢方薬の効果的な服用方法と養生の仕方について説明します。漢方薬は体を温めて、汗を出させることでインフルエンザを治します。そのため、エキス製剤を飲む場合は湯で溶くなど薬を温めて飲んでください。内服した後は布団などをかぶって安静に寝ることも重要です。食べ物も、こってりしたものを避け、おかゆやうどんなど消化しやすい物を食べるようにしてください。
 漢方薬でインフルエンザの苦しみから早期に回復する可能性があります。近くの漢方専門医にご相談ください。

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