胃がん ~早期は内視鏡治療で根治も~[2]

  • 2017.09.06

胃がん

西日本新聞 2016年8月10日朝刊掲載

Q

嘔吐や貧血の症状が続いていた知り合いが病院を受診したところ、胃がん、それも進行がんだと診断されました。嘔吐や貧血が出るまでは、症状は特になかったようです。胃がんに初期の段階で気付くことは難しいのでしょうか?

 A

 前回[Vol.1]では、胃がんの初期症状などについてご紹介しました。今回は、飯塚病院での治療方法について、詳しく解説します。

 胃がんの治療法には、内視鏡による治療、外科的手術、化学療法などがありますが、進行状態により選択できる治療法が異なります。
 転移がある、またはその可能性がある場合の治療法は、外科的手術・化学療法などです。転移の可能性が極めて低い早期がんの場合は、内視鏡による治療(内視鏡的粘膜下層剝離術=ESD)ができます。
 ESDは内視鏡を使ってがんの部分を正常な胃の壁から薄く剝ぎ取り、がんを切除する治療法です。「おなかに傷がつかない」「入院期間が短い(約1週間)」「治療前後での生活の質に差がでない」などのメリットがあります。私はESDの処置具を考案した経験があり、ESDについて少し詳しく説明します。
 ESDでは、まず内視鏡を胃内へ挿入します。内視鏡の映像を確認しながら、剝ぎ取る範囲を明確にするため、がんの部分を取り囲むように処置具を用いて目印を付けます。処置具は内視鏡の内部を通し胃内へ挿入するため、患者さんの負担を軽減できます。
 次に、胃の壁に穴を開けないよう対象領域の下の胃壁内に液体を注入し、安全な処置スペースを確保します。その上で処置具に通電し、目印に沿ってがんの周りの正常な胃粘膜の全周を切開します。その後、がん部分の下の層も同じように処置具で切開し、がんをひとかたまりとして、体内から切除します。

 処置具は、かつての絶縁加工のない棒状のナイフで通電切開するタイプから進化を続けています。現在では処置具の全表面が絶縁加工され、しっかりとつかんで通電切開したり、圧迫して通電凝固止血できたりするハサミ型処置具が登場するなど、より安全で確実なESDが可能です。
 ハサミ型の「クラッチカッター®」は私が考案し、内視鏡メーカーにより開発・製品化された〝飯塚生まれ〟の処置具です。当院ではこの処置具を使ったESDを2010年から行っており、これまでに千人を超える患者さんの早期がんや前がん病変を、安全かつ根治的に切除しています。

消化器内科 部長 赤星 和也医師

飯塚病院の医師をはじめとするスタッフが、医療に関する情報や病気の予防法などを分かりやすく解説する西日本新聞の連載「あなたのカルテ」を転載します。(西日本新聞筑豊版 毎週水曜日連載中です)